2025年4月8日、大阪製鐵株式会社(東証プライム5449)は、2025年4月15日を効力発生日として予定していた自己株式12,360,699株の消却を中止すると発表した。同日開催の取締役会で決定したもので、資本効率向上と上場維持基準充足という当初の目的が現時点で達成可能と判断したため。
中止の背景:SCの株式保有が鍵
大阪製鐵は2025年1月31日、東京証券取引所プライム市場の上場維持基準(流通株式比率25%以上)充足を目的に、自己株式の公開買付け(TOB)を実施。しかし、主要株主であるSC(JAPAN-UP信託)が2025年2月時点で株式保有比率を14.06%まで引き上げたことで、SC保有株が「非流通株式」に該当する可能性が浮上した。
当初、SC保有株が非流通株式と見なされれば、同社の流通株式比率は25%を下回るリスクがあった。しかし、2025年3月末時点の株主名簿を基に検証した結果、現状で上場基準を満たしていることが判明。4月15日時点での消却緊急性が低下したため、実施時期を再考する方針となった。
今後の展開:消却は「見送り」而非「撤回」
大阪製鐵は「資本効率向上はTOB実施で既に達成された」と説明。一方、SCの株式が非流通株に該当するか否かは今後の構造分析待ちで、必要に応じて改めて消却を検討する構えだ。市場関係者からは「SCの動向次第で再度TOBや消却が行われる可能性もある」(アナリスト談)との声も上がっている。
同社株は8日朝方、前日比1.2%高の2,450円で取引を開始。中止決定は市場予想の範囲内と受け止められ、大幅な値動きは見られていない。
用語解説
- 流通株式比率:上場企業の株式のうち、市場で自由に取引可能な株式の割合。東京証券取引所はプライム市場で25%以上の維持を義務付け。
- SC(JAPAN-UP信託):カイマン諸島籍の信託機関。大阪製鐵株を14%超保有する大口株主。